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蟹座の月の欲求
前回の記事で、「蟹座のテーマは『感情の育成』です」…と書きました。
心理占星術の世界では、月は「~したい欲求」と読みます。
なので、蟹座の月は、ゆるゆると抽象的に表現すると、「自分の感情を大事にしたい欲求」となります。「自分の心を感じきりたい欲求」と表現してみてもいいかもしれません。
蟹座の月を持つ方は、ぜひ、ご自身が「あっ、これ、しっくりくる…!」と感じる表現を探してみてください。そうやって、自分に対する理解が深まるほどに、「私はちゃんと私のことがわかっているんだ」とより安心することができる…かもしれません。蟹座の月にとっては安心することがなによりも大切ですので、心ゆくまでしっくりくる表現を探ってみてください。
さて、蟹座の月を持つひとが、「私の感情が満たされている」と実感するためには、どうすればいいのでしょうか。
蟹座というと、感情豊かで、とても愛情深く、しばしば身内びいきをしてしまうイメージを持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これらはたしかに蟹座の性質の一部を表現しています。感情を軽視する蟹座の月のひとがいたら、かなりまずい状態だと思ったほうがよいでしょう。というか、別に月が何座であってもまずいと思います…。
蟹座は身の回りの人々との精神的な結びつきを実感することで、「自分の居場所」を作ろうとします。
安心できる居場所を失ってしまうと、蟹座は心を守るために自分の殻に閉じこもり、やがて、身も心も干からびてしまいます。
なので、蟹座の月を持つひとは、太陽が何座であろうとそのエネルギーをフルに使って、自分が120%安心できる居場所を得ていかなければならないのです。
蟹座といえば団欒です。
たとえば家族や仲間で集まって同じ釜の飯を食う食卓も、蟹座らしさを発揮できる場所の好例でしょう。
家族で丸茹でのカニを食べていると、みんなカニの身をほじくるのに必死で無言になり、食卓がカニ汁飛び交う殺伐とした空間と化します。
ですが、みんながみんなカニを食べることに夢中になってしまうと、蟹座の月の欲求は満たされません。満たされるのは食欲と、牡牛座の月の欲求ばかりです。
蟹座が胃だけではなく心まで満たすためには、「カニ、おいしいね」と互いに言葉を交わし、「おいしいカニを食べられてしあわせ~」という気持ちを共有しなければいけないのです。
また、蟹座は「場作り」を行う活動サインでもであるため、「おいしい」や「しあわせ」といった感情をシェアできる場作りを積極的に行ってもいいかもしれません。
また、蟹座は「水の星座」です。
「水の星座」は「理解」を司っています。「風の星座」で得た知識を、「水の星座」にて自分の内側に落としこむことで、「理解」に至るのです。
ゆえに、蟹座の月は「理解したい/理解されたい」という欲求も抱いています。相手に自分のことを理解してもらえて、すごくうれしかったし、すごく安心した…という経験は、だれもがしたことがあると思います。
この「理解されることで」「安心したい」という欲求が、他のどの星座よりも強いのが蟹座の月なのです。
支配星からも、蟹座の月の欲求を考察してみましょう。
蟹座の支配星は月です。つまり、月にとって、本来の居場所は蟹座なのです。「蟹座の月を持つ」ということは、一番居心地のいい星座に月がある…ということですね。
ですが、居心地のいい場所にいると、つい気が大きくなってしまうのが人間の哀しい性です。
そんなわけで、蟹座の月は、「満たされていたい」「理解されたい」「そして安心したい」という欲求が、他の星座よりも強い面があります。徹底的に感情を味わい尽くしてやらなければ、蟹座の月は満たされてはくれないのです。月が蟹座だと大変なんだなぁ、とたまに思うことさえあります。
蟹座のうるうるの水まんじゅうみたいな月には、愛情という名の水をたっぷりと注いでやらなければなりません。すぐに干からびてしまうからです。
安心できない場所、つまり風当たりが強い場所に水まんじゅうを放置すると、あっというまに乾いてカラカラになってしまいます。
なので、蟹座のひとはこまめに感情という名の水を巡らせることで、心を潤わせていく必要があるのです。
また、水まんじゅうはやさしく扱ってあげないと、かんたんに崩れてしまいます。それに、水分が多いので、すぐに傷んでしまいます。
「非常にやわらかいので、お取り扱いにはご注意ください」「生菓子なのでお早めにお召し上がりください」…等々、水まんじゅうの性質を理解してもらうために、明確な言葉で説明していなければならないでしょう。
こんなふううに、蟹座の月を持つひとも、自分について理解してもらうためには、気持ちを言葉にして他者に伝えていく必要があります。言葉にしたところで伝わらない場合も多々ありますが、でも、言葉にしないとますます伝わらないのです。
さて、蟹座は他者と感情を共有しようとする星座ですが、「個人的な星座」でもあります。なので、実は、自分ひとりでも月の欲求を満たすことができるのです。
映画を見たり本を読んだりして、いっぱい笑って、いっぱい泣いて、ひとしきり情動を感じきることでも、蟹座の月は元気になれます。
蟹座の月は他のよりも大量の水を必要としますが、その分、感情のデトックスもしやすい星座なのです。
めんどうくさいけどたくましい。それが、私の蟹座の月に対する印象です。
繰り返しになりますが、蟹座は自分の感情がなによりも大事な星座です。
そのため、「会社のルールなのだから、私情なんて認めない」「もういい年した大人なんだから、泣いたり妬んだりしてはいけない」と感情を殺そうとすると、蟹座の月は元気がなくなってしまいます。
規則を守ることは確かに大事です。でも、いつでもどこでも四角四面な生き方は、蟹座の月にはあまりにも酷すぎます。
どうか、蟹座の月のひとは、自分がやわらかな心を持っていることを認め、茹でたカニの身のようなみずみずしさを守りぬいてください…。私はおいしいカニが大好きです。
蟹座の月と作風
蟹座の月を持つひとの作品は、情緒豊かな印象です。作品を読んでいて、肌にぴたりと密着するような感覚があるのです。
この感覚は、軽やかな、それこそ水のベールのような場合もあれば、窒息しそうな重厚感を帯びている場合もあります。
これは、登場人物の感情が、比較的色濃く描かれているからだと考えられます。登場人物と読み手との距離が近いがために、作中で生きているひとびとの感情や息づかいが、質量を伴って感じられるのです。ひとによっては、「重たい」と感じるケースもあるようですね。
また、蟹座が強い創作家さんは、感情をみずみずしく描くのが得意ですが、生臭い、嫌な感じの生々しさは比較的出にくいようです。同じ「水の星座」である蠍座や魚座の月に比べると、とっつきやすいかもしれません。
(基本的に、蟹座をはじめとした活動サインの月を持つ創作家さんの作風は、不動サインや柔軟サインの月を保つ場合よりもクセがないと思います。が、検証がまだまだ足りません…)
また、過去の記憶にとらわれていた登場人物が、その記憶にまつわる感情を感じきって、先に進むなり成仏するなしして終わるケースも、蟹座の月を持つ方の作品に多いようです。
もちろん、主人公が過去を大事に抱きかかえながらも先に進んでいく終わり方もあれば、情が深まりすぎて死んだり死ななかったりする終わり方もあります…。
が、いずれにせよ、主人公の感情が満たされるような落としどころに、至る傾向が見られます。
有名な漫画家だと、手塚治虫さんが蟹座の月を持っています。
蠍座の太陽も相まって(蠍座も蟹座と同じ「水の星座」です)感情がこれでもか!というくらい表現されているので、登場人物がとても人間くさくて、それが魅力です。
ただ、蠍座の太陽と蟹座の月が渾然一体となっているので、純粋な「蟹座らしさ」は感じづらくもありますが…。
蟹座の月を持っている創作家さんは、作品をつくりながら、その世界にずっぷり浸かることで、感情の浄化ができるかと思います。
思い入れのある登場人物を自分で殺して自分で泣く方もいらっしゃいますが、すごく有効かつロックな感情のデトックス法だと思います。端から見るとどんでもない自給自足の方法にも見えますが、自分で自分の感情を満たせるひとはやっぱり強いです。
もちろん、自己投影をしまくった登場人物を、べったべたに甘やかすのも有りでしょう。
ぜひ、自分の心にしっくりくる登場人物の愛で方を追求してみてください。
これ、蟹座の月を持っていない創作家さんにも、オススメしたい行為でもあります。(定型文)
ひとはみな月を持っていて、どんなひとの月も蟹座の性質を帯びています。みんなみんな、心の底では「理解されたい」「安心したい」と願っているのです。
自分の心に忠実な作品を読んでもらい、共感してもらう。
それは、自分を理解してもらうことでもあります。つまり、創作は自己開示のひとつの形でもあるのでしょう。
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