蠍座の月と作風

蠍座の月の欲求

前回の記事で、「蠍座のテーマは『他者の価値の利用』です」…と書きました。
心理占星術の世界では、月は「~したい欲求」と読みます。
なので、蠍座の月は、簡単に表現すると、「他者の価値を利用したい欲求」となります。
ただ、この表現だと、蠍座の月を持っているひとがたいへん腹黒そうな印象になってしまいます。なので、「自分以外のものの価値を知っていたい欲求」とでも言い換えてみたほうがいいのかもしれません。
特定の対象に興味津々で、「深く知りたい!理解したい!暴きたい!」と強く望み、そして「それを私のなかに取り込みたい」「そうやって自分自身も変質していきたい」という欲求を抱くのが、蠍座の月なのです。
蠍座の月を持つ方は、ぜひ、「この表現がいい…絶対にいい…」と思えるような言葉を探してみてください。理屈抜きに実感に落とし込める表現が見つかれば、少しは自分のことがわかるようになるのではないかと…。

さて、蠍座の月を持つひとが、「対象について深く知りたい欲求」を満たすためには、どうすればいいのでしょうか。
蠍座というと、一途だからこそ裏切るとこわいイメージです。さっき「さそり座の女」でグーグル検索をしたら、検索候補に「蠍座の女 こわい」が出てきたので、これは一般的な印象だと思われます。
実際、蠍座は対象にべったりとくっついて、寄生して、ときに取りこもうとする星座です。「月」は欲求なので、蠍座の月は「対象にべったりとくっつきたい」「寄生したい」「取り込みたい」みたいな感じになります。
ですので、蠍座の月を満たすためには、とにかく他人と関わりを持ち、あるいは外にあるものに没頭し、それをひたすら掘り下げてみる必要があると思われます。

蠍座の支配星は「冥王星」と「火星」です。そして、蠍座は「冥王星=境界」を「火星」の力でぶち破って、境界線の向こう側の価値あるものを獲得する…みたいなことを、前回の記事で書いたような気がします。
なので、蠍座の月は、境界線を突破しないと欲求を満たせないのです。蠍座は飢餓感の強い星座ですが、自分のお家に食料がないから、お外に出で食べ物をゲットしないと永遠に空腹のままなのです。
逆に言えば、蠍座は飢餓感――「私は持っていない」という感覚が強いため、自分の外側にあるものに強い関心を抱いているのです。

自分が持っていないものを手に入れるためには、外の世界から獲得してこなければなりません。
かといって、だれかから力づくで奪い取るわけにもいきません。
だれかにお願いすれば、ちょっとしたものなら恵んでもらえるかもしれません。ですが、果たしてそれだけで蠍座の強大な空腹感を癒せるのでしょうか。また、一方的に恵んでもらってばかりだと、次第に周りから嫌な顔をされるようになってしまいます。

そのため、あらかじめ自分が他者に提供できる価値を知っておかねばなりません。
また、なにかに没頭し、その価値を吸収する前に、自分の価値観をはっきりさせておなく必要があります。さもないと、他人の価値やら願いやら思惑やらに飲みこまれて、自分自身がわからなくなってしまうおそれがあります。
「自己価値」や「自分の価値観」は、天球の真向かいにある牡牛座がつかさどります。ですので、蠍座の月をしっかりと満たすためには、まずは自分のなかの牡牛座的な感覚を身につけることが大切です。
牛肉みたいにメジャーにはなれないかもしれないけど、サソリだって食べられる。漢方薬の材料にもなる。虫は栄養価が高いことから、食糧危機を切り抜けるための食材として注目されている。だから、サソリにだってチャンスはあるはずです。

自分の価値観を確認できたら、他者との関係性にダイブです。太陽のエネルギーを使って対象に徹底的に潜りこんで、その奥に隠されているものを手にできれば、蠍座の月は満たされるのでしょう。
その過程で、心境やら世界の見え方が変化していったり、ほんとうに大事なもの以外を手放さなければならなくなるかもしれません。が、変容することも蠍座のテーマです。
変わることは痛みを伴うかもしれませんが、ずっと変わることができないまま、ひとり淀んで腐っていくよりはずっとマシなはずです。「腐敗」ではなく「発酵」を目指したいところ。

ここですごくどうでもいい話をします。
蠍座の月がお餅だとします。よくくっついてときにのどに詰まるあたり、お餅は蠍座力の高い食材だと思われます。
今回はこのお餅をぜんざいに入れてみるとしましょう。
「他者の価値」という黒々としたぜんざいの底で、お餅はどろどろに溶けてしまいます。
ぜんざいはぜんざい、お餅はお餅、それぞれおいしいものです。ですが、その汁と餅とが渾然一体となった状態も、また違ったおいしさがあります。
つまり、ぜんざいとお餅、それぞれの価値が合わさって、新たな価値が創造されたのです。これこそが蠍座の魅力で、秘めた力なのでしょう。

蠍座の月と作風

蠍座の月を持っている方の作品は、人間関係が濃い。とにかく濃い。濃すぎてどろどろになっていることもしばしば。
一見さわやかなようでも、ひととひととのつながりが強調された結末になることが多いです。蠍座にかぎらず、水の星座の月を持っていると、物語が関係性に収斂していく傾向にあります。蠍座はその傾向が特に強い印象。

なにかを成し遂げることよりも、相手との関係をまっとうすることが大事。
互いに理解しあって慈しみ合うような結末もあれば、相手が好きなのに100%愛することはできなくて苦しんで、でもそんな苦さも飲みこんで成長するような結末もある。
人間関係を描くために、相手への執着や憎しみ、コンプレックスから生じた渇望感といった負の感情も積極的に織り交ぜてくるので、暗かったり生臭かったりすることもあります。「ふだんは隠されているものを知りたい」という蠍座の月の欲求が、他者に悟られるわけにはいかない感情を描こうとする姿勢につながっているのかもしれません。

蠍座の月を持っている創作家さんは、幸福感から喜び、怒り、不安、絶望感まで、さまざまな感情を容赦なく詰めこんではいかがでしょうか。
蠍座は感情を重視する水の星座でありながら、ほんとうの気持ちを外に出していくのが苦手です。ですので、作品で感情を吐き出せれば心のデトックスができます。
そもそも、感情を抑えた作品を描いたところで、蠍座の月のひとが心から満足できるのでしょうか。(反語)
感情の比重を高めると、えぐみや生臭さが出て見づらくなってしまわないか、心配になることもあるかと思います。ですが、そのへんは他の天体との兼ね合いもありますので、「蠍座の月だから」飲みこみづらい作品になってしまう…というわけでもありません。
吐き出した感情によって作品の色調が強められるため、迫力が出ます。魅力的になります。感情描写がウリになるのです。
蠍座の月を満たし、そして活かす作品を、ぜひ作ってみてください。

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